腹痛の症状はいつも普通の腹痛ではないことがあり、場合によっては生命に関わる危険性があります。腹部の大動脈瘤が原因の場合、適切かつ迅速な治療を受けないと、最終的に動脈が破裂し死に至る可能性があります。そのため、自身や身近な人の変化を注意深く観察することが、迅速に対応するために重要です。

腹部大動脈瘤を知ろう

大動脈の役割は、様々な臓器に血液を送ることです。異常が生じると、体内の血液循環システムに影響します。腹部の大動脈瘤は、一般的に動脈の劣化が原因で生じます。65から75歳の男性に多く見られ、血中脂質が高い、血圧が高い、喫煙者などのリスクグループに属している人に特に見られます。多くの患者が自覚症状が無く、検査を怠ることから、症状が進行し修正が困難になることがしばしばあります。

どのような腹痛が大動脈瘤の可能性があるか

腹部の大動脈瘤の場合、動脈が拡大している位置で脈打ちに合わせてズキズキとした痛みが生じます。しかし、人によって痛みの感じ方には個人差があります。治療を急がなければ、血圧の影響で動脈壁が薄くなり破裂し、破裂した場所から血液が漏れ出し、腹腔内での出血が発生した場合、即座に死亡するリスクが非常に高く、70～80％に達します。

しかし、腹痛の症状がないからといって、必ずしも腹部大動脈瘤ではないわけではありません。他の症状で現れることもあります。例えば、動脈瘤が脚の動脈を閉塞させる血栓が原因で脚が痛む場合や、動脈瘤が膨らんで脚を圧迫することで脚が腫れる場合もあります。そのため、医師は超音波検査やCTスキャンなど、追加検査を行って正確な診断を下す必要があります。

リスクグループ

• 血中脂質が高い人
• 高血圧の人
• 喫煙者
• 家族に腹部大動脈瘤の既往がある人
• 65歳以上の高齢者

診断方法

1. 問診および身体検査
2. 腹部の超音波検査
3. 胸部または腹部の高解像度コンピュータ断層撮影(Ctスキャン)（256-slice Ctスキャン）
4. 高解像度コンピュータ断層撮影による動脈のカルシウムおよび石灰化の検査 (CT Coronary Calcium Score)

腹部大動脈瘤の治療

腹部大動脈瘤の症状が重症の患者は、できるだけ早く手術を受ける必要があります。動脈壁が破裂した場合、死亡リスクが非常に高くなります。手術方法は主に2つに分かれます。

1. 胸部または腹部を開いて行う手術 標準的な手術方法であり、動脈の位置に応じて行います。大きな切開をして恥骨から股へと続く部分を開き、破裂した大動脈に代わる人工血管を挿入します。この方法は、大動脈が大きく破裂し、大量出血がある患者に適用されます。
2. 足の付け根から挿入したカテーテルを使用して、拡張された人工血管を挿入する手術 この方法では、人工血管を足の付け根から破裂した大動脈部分に挿入します。手術痕が小さく、痛みが少なく、回復が早い、合併症のリスクを減らし、死亡率を下げるなどのメリットがあります。

予防方法

動脈壁の劣化を防ぎ、炎症が増加することや壁に脂肪が蓄積することを避けることは、腹部大動脈瘤のリスクを減らすのに役立ちます。

• 高脂肪食を避ける
• 定期的に運動する
• 喫煙をやめる
• 糖尿病の場合、血糖値を適切に管理する
• 血中脂質と血圧を正常範囲に保つ
• 定期的に健康診断を受ける
• 適切な体重を維持する

重度の腹痛の症状があり、腹部大動脈瘤と診断された患者は、基準を満たした病院で手術を受ける必要があります。心臓および胸部外科医であり、バンコク心臓病院の副院長のアタプーム・スー・スパット氏は次のように述べています。“腹部大動脈瘤は、完全な設備を備えた大手術室で手術する必要がある疾患です。現在、バンコク心臓病院は患者の生存率を高め、再び良好な生活の質を提供するために、すべての形態の手術を提供する準備ができています。また、この病気は高齢者に限定されるわけではありません。若年層はリスクが低いものの、家族歴がある場合は、心臓専門医の助言に従って健康診断を受けるべきです。これにより、適切なタイミングで適切な治療を受けることができます。”