血管が膨張、破裂すると速やかに認識する必要があります。

72歳の男性が、非常に重篤なお腹の痛みと圧迫感を訴え、血圧低下と意識不明のショック状態で病院に搬送されました。胃の穿孔、腸の炎症、虫垂破裂がありました。患者の家族からの診療歴の問診により、患者は10年前に心臓バイパス手術を受けており、狭心症と慢性閉塞性肺疾患を患っていることがわかりました。この情報は、治療の診断を容易にし、お腹の重度の痛みと圧迫感を伴う症状から、腹部の大動脈、すなわち心臓と直接つながる主要な血管への焦点を絞ることになりました。

医師ヴィトゥーン・ピティグアグーン　バンコク心臓病院の心臓および胸部外科副院長は次のように述べています“上述のケースは、腹部の大動脈瘤が破裂したために、非常に緊急を要する複雑な患者であり、特に注意を要します。破裂した大動脈瘤を治療するための手術では、瘤が破裂し膨らんだ部位の上方の大動脈をクリップで止め、血圧の低下とショックを引き起こさないように迅速に行動する必要があります。同時に、外科医は迅速に手術を行う必要があります。なぜなら、限られた時間内、例えば脊髄が最大30分以内に血液供給を失うと、下半身の麻痺のリスクが生じるからです。この場合、医師チームは側方からの手術を決定し、胸部の2か所を切開して、破裂および膨張した部位の上方の大動脈をクリップし、次に側腹部を開いて腸の機能への影響を最小限に抑え、破裂して膨張した血管を合成血管で置き換えることで正常な機能を回復させました。全手術に要した時間は合計19分で、患者は危機を乗り越え、回復期にリハビリテーションを行うことができました”

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤とは、血管壁が硬くなり弾力性を失った結果、血管が拡大または膨張する状態です。これは多くの原因によって起こりえます。

腹部大動脈瘤のリスクファクター

7つのリスクファクターは以下の通りです:
1) 喫煙
2) 高血圧
3) 高脂血症
4) 肥満
5) ストレス
6) 遺伝
7) 血流感染

腹部大動脈瘤の治療

腹部大動脈瘤が5センチメートルを超えない場合、医師は薬の服用と年に1回のX線または超音波検査による治療の経過観察を推奨します。しかし、瘤が5センチメートル以上に拡大した場合は、薬の服用とより頻繁な経過観察、リスクファクターの管理を推奨します。瘤が破裂した場合は、できるだけ早く医師に相談し、治療を受けることが最も重要です。早ければ早いほど、生存率が高くなります。

病気の重症度

この病気の怖いところは、瘤が小さいうちは患者自身が気づかないことです。隣接する臓器を圧迫するほどに瘤が大きくなって初めて症状が現れます。例えば、お腹の痛みや圧迫感などです。腹部大動脈瘤が破裂しない場合は回復する可能性がありますが、破裂すると死亡率は50%にも達します。

腹部大動脈瘤の予防

腹部大動脈瘤から自分自身を守るためには、30歳未満の人は年1回の健康診断を受けることが勧められます。しかし、45歳以上の場合は、肺のX線撮影、腹部超音波検査、肝機能および腎機能テスト、心機能のテストに注意して身体検査をすることが推奨されます。

30歳から45歳は中間年齢層に属し、上記の7つのリスクファクターを踏まえて、3つ未満の場合は30歳の人と同様に健康診断を受けることができます。しかし、3つ以上のリスクファクターがある場合は、45歳以上の人と同様に健康診断を受けることが推奨されます。腹部大動脈瘤が破裂した場合は、できるだけ早く医師に相談することが重要です。早ければ早いほど、生存率が高まります。特に、手術を迅速に行える設備と外科医が揃っている病院を選ぶことが重要です。